LUMION

生体センシングで観客の熱量を可視化する購買予測システム

LUMION
期間
2024 – 現在

プロジェクト概要

ペンライトなどのライブグッズにセンサーを組み込み、脈拍などの生体情報から、顧客の潜在購買度や観客の感情の動きをリアルタイムに可視化する購買予測システムです。株式会社ココリーチの中核製品で、センサー機器から信号処理、無線、クラウドまで全てを自社で開発しています。

創業と課題の発見

私は中高時代にエンジニアとして多くの支援を享受した分、今度は自分が創る人を支援する側に回りたいという意向を、かねてから抱いていました。JETRO J-StarXのスタンフォード派遣で現在のCEOと出会ったことを契機に、株式会社ココリーチを共同創業しています。

課題の整理既存の顧客分析では無意識の感情を捉えられない、という課題の整理

創業後、イベント運営、演出、グッズ制作と、ライブエンターテイメントの各分野に聞き取りを重ねた結果、共通の課題が判明しました。観客がどれほど熱狂したか、特定の施策が顧客の購買意欲にどれほど影響しているか、誰も数値で語れず、定量化できていませんでした。現場では顧客アンケートや、主催者の勘による主観評価が用いられることが多く、顧客の反応を定量的に測定できる客観的な指標が存在しません。感情自体を定量評価できれば、演出もグッズも宣伝も、データに基づく意思決定が可能になります。LUMIONは、この課題を解決するための製品です。

開発したシステム

発光する試作機発光するLUMION試作機

機器は腕輪型とグッズ組込型の生体センサーで、いずれも自社設計です。信号としては心拍と皮膚電気活動を取得し、独自のフィルタでモーションアーチファクト(ノイズ)を除去した上で、Arousal-Valenceモデルにより情動を推定します。集計側はクラウド上に構築しており、Pub/SubとBigQueryを軸に会場のデータをリアルタイムに可視化します。構成は案件に応じて再構成しています。

試作機の構成リストバンド型試作機の構成。電極・振動モータ・無線マイコンを内蔵 底面の構成底面側。光学式の脈拍測定基板と皮膚コンダクタンス電極
試作機球体ディフューザを組み合わせた試作機

実際に実証実験を実施すると、無線通信という意外な箇所に難所があると判明しました。数千人が密集する会場で全ての機器のデータを同時に送受信しようとすると、WiFiと干渉する2.4GHz帯では成立しません。そこで、920MHz帯のLPWAを軸に、数万台規模での通信を前提とした通信方式を独自に設計しました。

感情円環モデル感情推定に用いるラッセルの感情円環モデル 感情のプロット取得データの感情円環へのプロット リアルタイムモニタ脈波と感情推定のリアルタイムモニタ 開発用モニタツール自作のESP32リアルタイムモニタ。姿勢・脈波・LED制御を統合

実証と展開

展開の構想生体反応から感情・関心度を測定し、対面イベントで活用する構想

最初の実証実験は、採択を受けていた100BANCHの主催祭典、ナナナナ祭で実施しました。3000人規模の会場で、データは安定して取得できました。一方で、装着位置のずれ、電波の混雑、運用の負荷といった実環境特有の課題も判明し、フィルタの実装と無線の改良に反映しています。

2025年7月からはJETRO Beyond Japan Zero to Xに採択され、ロサンゼルスで北米ライブエンタメ市場の検証と、現地企業や投資家との関係構築に努めました。2026年には、得られた結果とプロトタイプを、国際学会IEEE RoboSoft 2026のワークショップでも発表しています。

実証の規模は今後段階的に拡大し、ライブの現場で熱量を可視化できることを標準にしていく方針です。

関連リンク