中一教育
部の知識を継承する教育プロセスの構築
プロジェクト概要
ロボット研究部の新入生教育を、プロセス全体を通して構築したプロジェクトです。何を、どの順序で、何を用いて指導するかを設計し、その中核として300ページ超の教育資料と教材キットの説明書を書き下ろしました。先輩の知識が後輩に伝わらず、代替わりのたびに部の技術力が低下するという問題を、仕組みで解決しています。
構築の背景
当時の部には、知識を継承する仕組みが存在しませんでした。Bellatrixの開発で苦労して習得した設計や実装の要領も部員の代替わりで失われ、後輩はほぼ同一の内容を一から学び直していました。毎年、同じような状況が続くことを見ていて、その非効率さを痛感していました。COVID-19による休校で部活動が停止した際、私はこの時間を教育の仕組みの構築に充てることを決意し、同級生数名と共に着手しました。
設計した教育プロセス
教材キットの部品一式。DIP部品のみで構成した独自基板のArduino「Belladuino」を自らはんだ付けするまず、新入生が入部してから開発の戦力になるまでに、何をどの順序で習得すべきかという道筋から設計しました。その上で、その道筋に沿って学習できる教材キットを整備し、キットの説明書と、300ページを超える教育資料を執筆しました。組み立てて終わりの手順書ではなく、なぜそうするのかという周辺の知識まで習得できる構成にしました。キット自体も、全ての部品にDIPパッケージを採用した独自基板のArduinoを自らはんだ付けする段階から学習が始まる構成とするなど、必要な知識を効率的に、且つ無駄なく習得できるよう細部まで設計しました。
教育資料の紙面。電圧・電流・抵抗を注射器の水に例えて解説執筆では、読者が中学1年生だという前提に最も苦しみました。自身にとって当然の予備知識を、読者は一つも有していません。読者がどこで停滞するかを想像しながら、先回りして説明を配置しました。教材の制作は読者の想像から始まると、執筆しながら痛感しました。
数人での共同作業だったため、役割分担や進捗の管理もこの経験で習得しました。
教育資料の表紙と裏表紙
第1章。LEDや抵抗などの電子部品の解説
付録。専門用語の英語対訳と回路図記号
Arduinoの導入。配線図とコードの解説
プログラミングの基礎。変数の解説
Inventorでの3D CAD操作の解説
CADのスケッチ機能の解説
回路学習の目的とEagleの解説
回路図の作法の解説
コンデンサの種類と使い方の解説
はんだ付けの手順解説のページ
印刷した教材の束結果
黒板前で部品を解説する授業の様子この仕組みにより、後輩たちは先輩の知識を継承した状態から開発を開始できるようになり、部からは全国大会出場者が輩出されるようになりました。個人に依存していた知識を、部全体の財産に転換できた経験です。ここで習得した指導方法は、釜山大学でのROS 2講義でも、現在の会社での共同開発でも発揮されています。
教材キットを用いた授業風景
キットの組み立てに取り組む新入生
3D CAD講座の様子
理科室での授業風景